盲導犬と歩んで見えてきたもの

内田順朗

1 はじめに

昨年の秋、地元白山町で活動している盲導犬を導入しようという民間グループの支援を受けて、私はアイメイトのロビンと生活するようになりました。

ご承知のように盲導犬を使うといっても現在のシステムでは共同訓練という最低4週間の泊まり込みの訓練を受けることとなっています。イヌの世話に始まり安全に歩行する技術と知識を得ることはもちろん、視覚障害に関する一般知識やちょっとした動物学も勉強します。

私は幸運にして4週間余りでとりあえずイヌと安全に歩ける技能が身に付いたとしてロビンとともに家庭にもどりました。

その後10ヶ月を経て私の生活と周りの変化について気づいたことを書いてみました。

2 安全に歩けると言うこと

盲導犬を使う最大の目的は安全に単独歩行をすることです。白杖による単独歩行は歩行訓練士によるきちんとした訓練によりその技術を習得できるもので、私自身も一定の訓練を受けて白杖歩行をしてきました。

私はそれなりに単独歩行の自信もあって結構外出は頻繁にする方です。とはいうものの駅のホームから転落や電柱などへの衝突・迷いこみなど危ない経験も少なからずあります。

安全を優先させれば歩く効率は悪くなるし、心身の疲れもつのってきます。


  3 楽しく歩けると言うこと

盲導犬を使う技術を身につければ、楽しく安全に歩けるようになります。

イヌが盲導犬となるもっとも必要な条件は、安全ということです。使用者の命令には素直に従うことと同様に、安全が確保できないのであれば、使用者の命令であっても服従しないというのが盲導犬の安全原則なのです。

発進の命令をかけてもイヌが動かないとすれば、それはイヌがすねているのではなくて、そこには動いてはいけない安全でない情況があるということです。

安全にそしてスムーズに歩けるということは、私自身の気持ちも身体も大変軽快なものにしてくれます。本来の意味での散歩が楽しめるようになります。


  4 広がってゆく人とのふれあい

毎日のイヌの世話とイヌの運動のための外出・散歩は義務と思えば重荷にはなるでしょう。動物と人のふれあいを必要以上に強調する気持ちは私にはありません。

盲導犬は一緒に歩いてくれる友達です。イヌとともに歩いていることで、多くの人たちとふれあうことができました。

導入に当たって募金活動をしてくれた人たち・行政や社協の人・散歩の途中で声をかけてくれる人たち・そしてもちろん訓練を支えてくれた盲導犬センターの人たち。そうそう、盲導犬を連れて小学校にも何度かお話をしに行きました。そのような人たちが町で・電車の中で声をかけてくれます。

白杖で単独歩行をしているときは、もちろん真剣に歩いているわけですからどうしてもコワークてキツーイ顔つきになるのかもしれません。声はかけにくい雰囲気でしょうね。

盲導犬がきちんと歩いてくれると、こちらもルンルン気分です。そんな空気がイヌにも伝わるのかイヌも楽しそうに歩くのです。そのような爽やかな雰囲気が出ればよいなと思います。


むすび

盲導犬は決してオールマイティーでもスーパードッグでもありません。

マスコミで取り上げられるほどに素晴らしいものというイメージの広がりは、大いなる誤解を生んでいるかも知れませんね。

盲導犬はもっともっと使用されて良いと思います。しかしながら日本の住宅事情や気候の条件、訓練期間や費用の問題・受け入れ先の理解の問題などクリアーしなければいけないことも多いのです。

そのような問題解決のために多くの人たちが努力されていることもまた盲導犬を持って知りました。

折しも今年は盲導犬も含めた身体障害者補助犬法が制定されます。

盲導犬を使用するしないに関わらず、視覚障害者が安全で快適に外出出来るような街になることを願うものです。

2002年盛夏


上記の文面に「身体障害者補助犬法」と言う言葉が出てきました。

これは、身障者の人たちが補助犬を連れて外出する際に、交通機関やホテルなどの各種施設は補助犬の同伴を拒んではならないという法律です。

  (下記に法律の一部を記載しました)

「身体障害者補助犬法」は今年の10月から施行されます。

補助犬は身障者の大切なパートナー。温かく迎える社会にしたいものです。


身体障害者補助犬法(抜粋)(法律第四九号)
・目的
 身体障害者補助犬の育成及びこれを使用する身体障害者の施設等の利用の円滑化を図り、もって身体障害者の自立及び社会参加の促進に寄与することとした。(第一条関係)
・定義
「身体障害者補助犬」とは、盲導犬、介助犬及び聴導犬をいうこととした。(第二条関係)
・施設等における身体障害者補助犬の同伴等
@国、地方公共団体、公共交通事業者、不特定多数の者が利用する施設の管理者等は、その管理する施設等を身体障害者が利用する場合、身体障害者補助犬の同伴を拒んではならないこととした。(第七条〜第九条関係)
A身体障害者補助犬を同伴して施設等の利用又は使用する身体障害者は、当該犬にその者のために訓練された身体障害者補助犬である旨の表示をしなければならないこととし、また、その身体障害者補助犬が他人に迷惑を及ぼすことがないようその行動を十分管理しなければならないこととした。(第十二条及び第十三条関係)

日本ライトハウス  視覚障害生活訓練等指導者養成課程が2年制に

国立身体障害者リハビリテーションセンター学院 視覚障害学科や日本医療福祉専門学校 福祉技術学科では視覚障害リハビリテーションのワーカー養成課程が2年制だったのに対し、日本ライトハウスでは前期・後期で1年過程でした。

その日本ライトハウスもついに2年制の養成課程になりました。

3施設とも2年制になったことで一応教育課程としては統一化をみたということになるのでしょうか?

視覚障害リハビリテーション専門職の資格化を考えれば、遠い道のりの第一歩になることは、間違いないでしょう。


・目次とはじめに

・視覚リハ研究会参加感想

・便利でっせ  ――PDAの紹介――

・白杖豆知識アレコレ

・盲導犬と歩んで見えてきたもの

・平成14年度の総会と講演会の報告

・情報フォーラム


・「REVIネット情報」のバックナンバーインデックスにもどる


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