私は昭和62年に病気が発病し、入退院を繰り返していました。幸いにも九死に一生をえて助かりましたが、「失明」「人工透析」「骨髄炎によるかかとの裂傷」などが残り一度でたくさんの障害が残ってしまいました。
しかし、家族の協力もあって病気も順調に回復することが出来、また、体調も整ってきたので点字を覚えてみようと思いました。
まず市役所へ電話をし、そして杖、点字版を購入したのですが、杖は腰までしかなく点字の五十音もなく、また説明書もありませんでした。
後で分ったのですが、この杖では歩行は出来ず、また点字も手付かずの状態になり、そのうち「まあ いいか」という気が起こり数ヶ月間何もせず過ごすことになりました。しかしこれではいけないと、今度は点字の通信講座に申し込み、付いていたマニュアルにより五十音は覚えましたが、この通信教育のマニュアルは晴眼者用で、1人で独学するのは難しく打ち方、読み方までは分りませんでした。そのうち、私の悪い癖である「まあ いいか」というのが出てきて、そうしてまた数ヶ月が過ぎ、もんもんとした日々を送っていたとき盲学校の先生とお会いすることが出来ました。
この先生に点字、歩行訓練を相談したのですが盲学校に通うには、「距離」「障害」「病気」を考えると難しく、あきらめることになりました。そのとき先生の奥さんが私の自宅まで来て教えていただけると、ありがたい申し出をしてくださり、家族共々大喜びでお願いすることになりました。
この人は付き添いもヘルパーもつけずに子供を一人連れ、津より伊勢まで電車でやってこられたのです。私は、訓練次第でここまで出来るのだと感動と感心をし、また、この先生の指導により、点字で手紙まで打てるようになりました。あとは、読む練習ですが、これは一年ぐらいかかるので独学することになりました。ところが教材もなく、日々に必要度の少ないものは覚えるのも難しく、そのうち「まあ いいか」と例のごとく数ヶ月が過ぎた頃、ここでまた先生の奥さんが助け舟を出してくれました。「REVIネット」という新しい組織が出来たと、ここでは訪問訓練してくれる、と願ってもないことでした。早速入会し、訓練を受けることになりました。点字は上村さん、歩行訓練は宮本さん、上住さんに指導していただきました。
この方々のおかげで一年経ったとき遅いながらも広報を読めるようになり、今はパソコン資料の整理などに利用しています。また、病院内を一人で歩けるようになりました。
一年前に比べると格段の進歩だと思います。そのときの気持ちは、どこかの国のマラソン選手が自分で自分を誉めてやりたいと言ったとか、まさにそういった気持ちでした。私のように、中途失明者にとって一番必要なのは、そのときに適切なアドバイスをしてくれる人がいるということだと思います。
報道によると病気による失明者がたくさん増えるようです。私は失明をしたとき何もわからず障害手続きだけをしました。ところが、いつまでたっても連絡がきません。ここで始めて障害者の現状がわかったような気がします。登録をしたとき、すべての機関に連絡が行くようなシステムが必要ではないでしょうか。病院、市役所、盲人会などの横のつながりがないような気がします。早くこういったシステムを作り、将来の人たちに適切な情報を提供することが必要だと思います。
私は運良く盲学校の先生とお会いすることが出来、REVIネット間でつなげることが出来ました。
しかし、個人の情報や機会などは限られています。私もやっとここまで出来るのに数年かかってしまいました。もっと早く適切な機会を得るには、個人同士のつながりも必要でしょう。また「REVIネット」などの組織での個人同士の情報の共有も必要だと思います。民間組織と公とのリンクにより、広報活動も必要だと思います。今、老人介護の問題が大きくクローズアップされています。国は介護保険により介護を組織化することに必死です。介護には訪問介護があります。障害者にも訪問訓練があっても不思議ではありません。盲学校のような公の機関、REVI ネットのような個別機関、個人同士のつながりなど、それぞれが枠組みや利害にこだわらずトータル的な体制を作り、1人ももれることがないようにしていくことが必要だと思います。
REVIネットには点字、歩行訓練に限らず、パソコンや生活情報、ITを利用して個人情報を発信するセンターのような存在になっていただきたいと願っています。
微力ながら私もREVIネットの一員として協力させていただこうと思っています。
ありがとうございました。